第 34 回 出来ることは、全て実践する
2023.04.28
厚生省が昨日、新型コロナの感染法上の位置付けを、来月8日から5類に移行させることを正式決定しました。これにより自治体などからの、営業自粛を要請する法的根拠が無くなります。
飲食店では既にパーティション等を撤去する所が多出しており、減らしていたテーブル席も定員状態にするなど、この決定への歓迎ムードがいっぱいです。
ただコロナも含めた感染症が無くなる訳ではありませんから、顧客ばかりでなく従業員さんにとっても安心・安全な店であることが、大前提の時代になって来るかと思われます。何れにせよ新型コロナ対応の助成金等は撤廃される為、真剣に業績向上の為の自助努力をしないお店は、立ち行かなくなることが必至であると憂慮しています。
私の父が飲食店を開業した1950年代後半からは、高度成長と人口増に支えられ、出店すればお客さんの入る時代がずっと続きました。従って従業員さんの給料は右肩上がりで店には活気が溢れ、働く人々にとって、遣り甲斐の感じられる時代でした。またお客さんにとっては未知の料理が巷に出回るなど、外食の楽しみが増してゆく、色々な意味で、良き時代だったことが思い出されます。
翻って現在の飲食業界を眺めると、働く人にとってもお客さんにとっても、楽しみや幸福感が欠落したお店が多いことを感じます。その原因は、利益追求にのみ重きを置き、教育費や原材料費や人件費を削る、『 心の無いビジネス 』ばかりが増えてきたからだと思うのです。
人が食事をするという行為は、他の動物が、空腹を満たす行動とは全く異なります。
人の場合、それは本能を超えた喜びであり、複数で囲む食卓は、人間社会における『 毛づくろい 』の場でもあります。会食は人と人との絆を深めますし、お洒落なお店での二人だけの親密な食事は、時に新しい人生への扉までも開きます。また例え一人での外食でも、お店のホスピタリティーや空気次第で料理の味は引き上げられ、至福の時間となり得るのです。
心を込めて作られた料理が心を込めて提供され、そこに温かな笑顔と一言が添えられる様なお店では、お客さんは満足感と幸福感に充たされます。その結果、お客さんの満面の笑顔が働く人の心に、まるで鏡に当たった光の様に、そっくりそのまま返ってきます。言葉にして感謝されでもすれば、天にも昇る気持ちになります。この充足感と笑顔・満足・幸福の相乗性が、従業員さんに更にお客さんに寄り添おうという気持ちを起こさせ、お客さんもまたその献身に感応し、ご常連になってくださるのです。
コロナ以前2019年の帝国データバンクの調査によると、当時の外食産業の現状は、①『 倒産・廃業の増加( 2000年以降最多 ) 』②『 高い離職率( 全産業中トップの30% ) 』③『 慢性的な人手不足( 有効求人倍率3倍超 ) 』と三重苦状態でした。これからも業界を取り巻く環境は変わらないでしょうし、来るべき更なるインフレが、私達に重く伸し掛かると予想されます。しかしコロナ以後にどんな世の中になろうとも、善いスタッフさんが必要数いて顧客ロイヤルティも得られてさえいれば、安定かつ健全な継続営業は、必ず実現するものです。
サービス業は、人の心が価値を創り出します。働く人の心が荒まないよう、あらゆる手立てを講じることをお勧めいたします。働く人の心が荒めば、接客も商品も、どんどん質が低下してゆくからです。有効な対策については、過去の私のコラムをご参照いただければ、幸甚に存じます。そして愛される高収益店を目指し最善策を見定めて、何でもしてくださるようお願いいたします。
経営者さんの心情は、商品にもスタッフさんの仕事にも反映されるものです。本物の優良店を見付け出し、そこへ視察に行かれることもお勧めです。学ぶべきことは学び取り、ご自身のお店の反省すべきところは改善し、従業員さん方と一丸となって『 安全で幸福感に満ちた、心休まるお店 』を、構築していただきたいと思います。